平成21年度宇宙利用促進調整委託費応募

不採択でした!

10月23日付けの不採択通知が届きました。残念でした。申請書の内容が抽象的だったかなと思います。しかし、リモートセンシング画像データの草の根の利用は、いずれ大きな力を生むと思います。これからも地道に積み上げて行きたいと思います。よろしくご支援のほど、お願い申し上げます。


表記の事業に応募しました(2009.8.17)。衛星リモートセンシングの環境解析、環境問題の理解・解決の役立てる方法について常日頃から考えていることを申請書に込めましたが、基本的なスタンスは日本の科学技術行政の目指す方向とは異なるかもしれません。私はリモートセンシングは様々なセクターが協働して問題解決を目指す、モード2的な枠組みの中で、機能を発揮すると考えています。皆様のご意見を是非とも頂きたいと思います。

応募書類

プロトタイプシステム

文科省公募サイト

提案の要点

【衛星画像・空間情報による異分野協働型の新しい知識生産システムの構築】 衛星データには様々な要因が重なり合った結果が記録されている。このような積分情報を有効利用するためには、様々な分野、セクターの人材が容易に画像を閲覧・判読でき、多数の多様な情報を抽出し、その情報を共有できるシステムが効率的である。そこで、 ●大容量画像の圧縮・展開アルゴリズムを用いて大量の画像をWEB上で重ねて、誰でも閲覧できるシステムを構築する。 ●特に、古い、故に価値が生じた過去の衛星データをナチュラルカラーで画像化し判読を容易にする。 ●同時に、多種多様な空間情報(衛星データも含む主題図等)とその歴史・時間情報(過去の情報)を重ね合わせて同時にWEBから発信する。 ●そして画像情報と利用者の持つ知識情報・経験情報の間の双方向通信を実現することにより、衛星画像に価値を付加し、利用者が情報の提供者にもなり得るシステムを構築する。 本提案の核心は衛星データに含まれる一見小さいが、深い多種多様な情報を、多くの眼により発見し、活かす点である。この点が従来の特定目的指向型の利用と異なる点であり、宇宙利用促進、特に地球観測成果の効率的な社会還元のための基盤ツールになると考える。

ドラフトにはあったが、最終稿で自粛した図

科学には様々な側面がある。“真理の探究”、“役に立つ”、“外交のカード”(異論もあるかもしれないが、科学史や科学論を紐解いて欲しい)。これらの中で私は“役に立つ”という側面を重視したい。どんな役に立ちたいのか。それは問題の解決であり、地域における人と自然の関係の問題と考えてよい。その問題は様々な要因が積分されて現れる。よって、問題の理解・解決のためには様々な分野、ディシプリン、技術が協働する必要がある。一つのディシプリン、技術だけで問題を解決することはできない。左の図の枠が解くべき問題で、円が個々のディシプリンや技術を表わす。一つの円だけで枠全体を包含できない。衛星画像は空間性(画像の本質)、多様性(様々なものが写しこまれている)、時間性(繰り返し撮影されている)を内在し、そこから関係性を抽出することにより、問題の理解が可能となる。衛星画像はもっと社会に露出すべきである。
本提案ではアジアシステムの上に、たくさんの個別(地域)システムを構築することとした。それは、解くべき課題は地域にあるからである。アジアスケールの画像閲覧システムも構築するが、それは環境問題の発見を主目的とし、地域システムで個々の問題の理解と解決をはかる。これまではグローバルスケールのような広域スケールを上位に置いてきたが、どこでも役に立つということは、それだけの機能しかなく、地域における多様で複雑な問題には対応できないと考える。だから、個別(地域)システムはアジアシステムの上位に位置づけている(この図は提案書中にありますが、文中では説明を穏やかにしました)。
リモートセンシングによって理解すべき課題として地球温暖化がある。そこで地球温暖化を説明のための一例として取り上げてみる。地球温暖化は様々な危機を起こすかもしれない。一般的にこう考えられているとみなしてよいだろう。そうすると、地球温暖化が原因で、危機が結果となる。ストップ温暖化が説得性を持つことになる。
しかし、危機の側から原因を考えてみよう。危機を引き起こしている原因は多数あり、その中で地球温暖化の重要性は相対化される。もちろん、未来の安心のために、今、地球温暖化を重視しようという立場もあるが、私は現在の暮らしをベースに考えたい。現在は未来に繋がるから。今を生きる人々の幸せは未来のためにちょっと我慢してもらおうという考え方は私はとりたくない。現在の不幸の原因を取り除くことが優先されて良いのではないか。ただし、ここは突き詰めていくと市場経済や都市文明のあり方と関わってくる。まず、議論に入ることが必要だと考えます。また、人口問題、資源・エネルギー問題、食糧問題、水問題等の切実な問題の今後も同時に考えなければならない。すると、未来のあり方についてステレオタイプとは異なる見方が出てくるかもしれない。科学というものは価値に関する議論は行わないという誤解があるが、科学という行為には価値観や思想がすでに入っている。価値観を包含した科学、すなわち、どのような未来が好ましいかまで課題とする科学として、環境学が存在しても良いと思う。地球温暖化を例としたが、解くべき問題には常に包括的、総合的、俯瞰的な視点で望みたい。そのための重要なツールとして衛星画像が機能するはずである。