修士課程一年生による研究中間成果報告会
CEReSで学ぶ理学研究科、融合科学研究科の学生(修士一年生)の研究中間成果報告会が12月24日に開催されました。近藤研の学生(理学研究科地球生命圏科学専攻地球科学コース)の発表タイトルをお知らせします。近藤研を志望する学生は研究課題および考え方の理解の参考にしてください。
シャオケーティー アジ | 中国、新彊における社会経済構造の変化と土地被覆変化の関係に関する研究 |
黄 琳 | 中国、白洋淀における水域面積と湿原植生の変化 |
郡 佑輔 | 千葉県下総台地における表流水の硝酸態窒素濃度の時空間分布と土地条件との関係 |
新井祐美 | ロシア沿海州、北方林南限地域における植生変化とその要因解析 |
大谷 克洋 | リモートセンシングを用いたバングラディシュ、ガンジスデルタにおける地形変化の解析 |
反省・教訓
重要な説くべき問題、課題に対してあらゆる知識・経験を動員して対処する力を持つことが教育目標。リモートセンシングだけで解ける問題は環境問題の一部にすぎない。問題を解くためには周辺分野にも入り込み、リモートセンシングを手法のひとつとして効率的に使う方法論を主張しよう。
研究という行為において、図の作成は最も重要な作業の一つ。良い図を書けばそれが残る。図に描かれたものはすべて意味を持たなければならない。簡素で厳密な図を書こう。
自分の研究対象と、それを研究する重要性について明瞭な説明ができること。環境言説に流されずに、論理的な主張ができること。
時間、空間的に変動し、多様な属性を持つ対象を扱うときに、衛星計測の精度、誤差が結果にどのような影響を及ぼすのか、十分考えること。解きたい課題によっては、物理量計測の精度は問題にならない場合もある。精度を高めることが困難な計測でも、空間的、時間的に意味のあるパターンが見つかれば、仮説を立てることができる。目的と計測の精度がマッチングしている研究が最も効率的。
現場で取得したデータがどれだけ現象を代表しているのか。これはフィールドサイエンス共通の問題です。データの代表性を主張するには、時間・空間的に観測密度を高めれば良いのですが、現実には困難です。困難な観測を強要する質問・コメントがあるかもしれませんが、質問者自身のフィールドサイエンスに対する理解不足に起因する場合にはうまく説得しましょう。ただし、困難な観測を行わなければ新しい認識に到達できない場合は素直に認めなければなりません。この問題も前の項目と同じで、空間的、時間的にランダムでないパターンが見つかれば、何らかのメカニズムがあると考えて、仮説を立てる。次に、この仮説が一番確からしいとする論理的な考察を行う。そして、結論にするのがフィールドサイエンスの方法論だと思います。科学の結論はすべて仮説です。この仮説が反駁されるまでは認めるのが科学のルールになります。
リモートセンシングはきわめてデータリッチな状況にあり、様々なデータをWEBからダウンロードして使えるという幸せな状況にあります。しかし、使うデータの素性については十分理解に努めること。抽出したシグナルは実はデータ作成過程における仮定なのかもしれません。依拠するデータの(解こうとしている問題に対する)信頼性が崩れれば、研究の結論も崩れます。
普段の暮らしの中では協働を旨とすべし。ただし、研究は原則として競争であり、成果、アイデアに対するプライオリティー(先取権)、オリジナリティー(独創性)を尊重しなければなりません。他の研究室の学生の成果は、その指導教員との共同成果であることを意識し、そのプライオリティー、オリジナリティーを尊重すること。同様に自分のプライオリティー、オリジナリティーも尊重しなければなりません。自分の研究のアイデア、データ、成果は指導教員、共同研究者との共同財産です。財産はまず自分で使わなければならない。この財産を使って他の研究者が成果を出したら、自分たちは何もやらなかったことと同じ。
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