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このページは福島の外に向けて発信する近藤の考え方です。2023年3月に近藤は千葉大学を定年退職しました。それ伴いページを一端閉じましたが、ここに復活することにしました。福島を通して考えてきたことを記録し、これからも考え続けるために資料として公開したいと思います。(2024年)
近藤昭彦(2021.10):問題解決型科学としての地理学、岩波「科学」:リレーエッセイ地球を俯瞰する自然地理学No.91、Vol.91(10)、965-967.(ドラフト)
A.Kondoh(2021): Solution and Agreement in the Nuclear Disaster: Toward an Inclusive Society Respecting Relationship from Sacrificial System, in Nakajima, T. et al. ed. Overcoming Environmental Risks to Achieve Sustainable Development Goals Lessons from the Japanese Experience, Springer(世界に向けて山木屋の状況を発信しました)
日本学術会議学術フォーラム「気候変動等による地球環境の緊急事態に社会とどう立ち向かうか-環境学の新展開-令和3年7月3日(土) 13:00~17:50
日本学術会議公開シンポジウム「コロナ禍が加速する持続可能な社会の実現に向けた地球環境変化の人間的側面研究の推進」令和3年3月24日(水) 13:00~16:00
JpGU緊急スペシャルセッション「U25:新型コロナウィルス感染症と地球の環境・災害」 2020年7月13日
課題解決型研究を推進するための超学際のあり方に関する研究会~診断から治療へ~ 2020年2月21日
上智大学水希少社会情報研究センター講演会「環境と人間-地球規模、中東・北アフリカ、日本」 2019年11月15日 講義資料になりました。
山木屋に関する論文を保高さん(産総研)が纏めました(2020年8月24日)。
T. Yasutaka1, Y. Kanai, M. Kurihara, T. Kobayashi, A. Kondoh, T. Takahashi and Y. Kuroda(2020): Dialogue, radiation measurements and other collaborative practices by experts and residents in the former evacuation areas of Fukushima: A case study in Yamakiya District, Kawamata Town, Radioprotection, 55(3), 215–224.
福島について書籍の章を担当しました(2020年5月22日)。
近藤昭彦(2020.5):「環境汚染と地球人間圏科学-福島の原発事故を通して」、日本地球惑星科学連合編「地球・惑星・生命」、東京大学出版会、224-233.
\2,530(税込み)とちょっとお高いので、ドラフトを公開します。地球惑星科学連合は“科学者”の集団です。その中で“問題の人間的側面”を主張してきましたが、少しは届いただろうか。
福島について講演しました(2019年5月25日)。
原子力災害における解決と諒解-犠牲のシステムから関係性を尊重する共生社会へ-
文明の災禍としての原子力災害に関する論考を纏めました(「学術の動向」2019年10月号掲載)。
日本(あるいは世界の)は“犠牲のシステム”で運営される社会なのではないか、ということについて考え続けてきましたが、“犠牲”は宮沢賢治が考え続けてきたことでもありました。なぜグスコーブドリが死ななければならなかったのか。賢治は答えを明らかにしていませんが、宗教学者の山折哲雄によると日本では犠牲はみんなで分かち合う精神をもっているという。これは現代の資本主義とは相容れません。だから都市的世界と農的世界が共存し、相互に行き来できる精神的習慣を人間が持つことが大切なのではないかと考えています.(2024年2月追記)
川俣町除染等検証委員会報告(2016年3月)。
2015年度に「川俣町山木屋地区除染等に関する検証委員会報告書」をまとめました。議論の当初はいろいろなことを考えました。例えば、年間追加被曝線量が20mSVを下回っても、諒解の限度である1mSvを超える量に応じて国、東電に何らかの保証を求めてはどうか、など。しかし、行政は国とは抗いたくない(損するから)、住民は早く避難指示解除してほしい、という思いが揃い、最終的には国の定めた基準である20mSvを除染により下回ることをオーソライズする役割に徹することになった。その代わり、今後の暮らしと生業の回復に関わる提言を書き込んだ。理念として今後の具体的な施策の根拠にしてほしいという思いがあった。2016年3月には報告書を町長に手交し、避難指示解除を待つだけになった。原災課長がうれしそうに「一週間ほどで良い知らせをお届けすることができると思います」とおっしゃったことを思い出します。しかし、実際の避難指示解除は2017年3月31日になった。(2024年2月追記)
この5年間でやってきたことを纏めました(2016年3月)。
農村計画学会34巻4号(2016年3月)論考「里山の放射能汚染の実態と復興-放射能汚染の実態と復興への課題-」
文明の災禍により、広域放射能汚染が現実となり、暮らしの突然の途絶、強制された人と自然の分断が生じ、5年が経過しました。この間に福島、山木屋に通いながら考えたことを農村計画学会誌に論考として纏める機会を頂きました。2015年度は川俣町山木屋地区除染等検証委員会委員として報告書を作成する役割を頂きました。これで少しは山木屋地区の将来に対する思いは表明できたかも知れませんが、現実の前では遠吠えに過ぎないのではないか。自己満足しているつもりは全くありませんが、これからどうしたらよいのだろうか。福島からはるか離れた場所で何もせずに悶々としている自分が情けない限りです。
日本語訳はスウェーデン国立スペース物理研究所の山内正敏先生のご尽力、リーダーシップのもと、多くのボランティアの方々により進められました。訳自体は2011年にはできていたのですが、権威によるオーソライズに時間がかかり、正式は公表は2013年3月25日になりました。仮訳した文書は私訳として川俣町にお届けしてはいたのですが、わかりにくかったと思います。今回体裁が整いましたので、改めて参考にして頂ければと思います。
平成25年度除染技術実証事業に採択されました。課題は「無人ヘリによる超低高度計測による空間線量率マップの作成とハイパースペクトル技術による植生・土地被覆現況図の作成」。山木屋地区における山林域も含んだ高空間密度の空間線量率マップの作成を目指しています。<終了しました。報告書は下記>
今届けたい 地域からの声
購読している朝日新聞の記事を書き留めようとしましたが、首都圏版ですので福島に関わる記事は多くありません。福島に行ったときは必ず福島民友を買いますが、首都圏とは比較にならない量の原子力災害に関する記事があります。すべてをフォローすることはできませんが、今現在苦しんでいる方々がおり、首都圏に住む我々と関係する事象による苦しみであることを意識してほしいと思います。
活動報告
山木屋地区で行われたダイアログセミナーにおける近藤の役割は地域を説明することでした。山とともに生きることの誇り、ふるさとに対する誇りを説明したかった。
福一事故5年目の節目に、これまでの活動を振り返りました。改めて、今後の放射能対策のあり方を提言しましたが、何よりも生業の復興が最優先です。幅広い協働が必要な課題です。里山の放射能対策は、小技術で行う、そのための支払の仕組み(例えば、農水省の多面的機能支払い)を作って、山に関わり続けることで山を維持して行ければと思っています。
●小林達明先生による里山の現状と課題(森林環境2016)についてはこちらをクリックしてください。
里山である山林の放射能対策について:これまでの調査の振り返り、小技術・中技術による対策の提案、空間線量率モニタリングの新しい技術
里山である山林の放射能対策について:詳細マップの作成、小技術・中技術による対策の提案
空間線量率等の測定結果について簡単に纏めました。随時更新していきます。
千葉大学有志と千葉大学と関係性を持っているグループによる活動の報告会を開催しました。プログラムをご覧ください。包括的、総合的な枠組みが出てきました。具体的な提案と実践が喫緊の課題です。
この一年間の活動報告を川俣町にて行いました。園芸学研究科小林教授による山木屋の実験サイトにおける調査結果、同松岡教授による安全・安心研究の報告、および近藤が実施しているマッピングの成果について報告しました。近藤の報告資料は上のボタンをクリックしてください。人の暮らしに関わる里山流域単位で除染を行う基礎資料となるGISの作成について紹介しています。
千葉大学におけるこれまでの調査結果を報告させて頂くとともに、園芸学研究科の先生方と、今後の農業のあり方について議論を行いました。
提言・アピール・動静
国の施策に関する動静
原子力災害被災地の里山の汚染対策に関するアピール 2012年9月9日
日本緑化工学会・日本景観生態学会・応用生態工学会3学会合同大会(ELR2012)において研究集会を開催するとともに、日本緑化工学会において表記のアピールが採択されました。小林達明先生のご尽力によるものです。里山の放射能対策を推進していきたいと思います。
野田首相が出席した同窓会で千葉大学山木屋後方支援チームとして下記の文書をお渡ししました(2012年1月3日)。
内閣総理大臣 野田佳彦 殿
阿武隈の復興のありかたについて
平成24年1月3日
千葉大学山木屋後方支援チーム一同
福島第一原子力発電所事故により不意に暮らしが奪われてしまった地域があるという事実に直面し、我々千葉大学の有志は研究者として役割を果たしたいと考え、福島、阿武隈地域を注視し、通って参りました。
千葉大学では震災前からの川俣町との交流に基づき、計画的避難区域である山木屋地区で地域の方々と協働で様々な調査や議論を重ねております。その過程で感じざるを得ないことは、国と地域の視線が交わらないことです。国の施策がなかなか地域で使えない、国の調査が何をやっているかわからないという声を聞き、我々はインタープリターとして、知りうる情報、私たち自身のデータを地域に可能な限りお伝えしながら、住民の皆さんの声を聞いて参りました。
阿武隈の民は里の生活と密着した森林の汚染を大変重大に考えています。里の田畑は森とつながっており、暮らしは森と里の循環から成り立っています。都市を主に想定された住宅地中心の対策だけでなく、農山村地域を包括的にとらえた除染、復興を推進してくださいますようお願い申し上げます。地域の復興、人の心の復興ができるまで私たち研究者は阿武隈に通い続ける所存です。
大学は地域と密接に連携しながら調査、対策、提言を行う機能を有していると考えます。千葉大学は川俣町と連携していますが、例えば、日本大学は飯舘村の方々と連携し様々な後方支援を行っております。その他の地域でも大学との草の根連携がたくさん進行しております。新しい年を迎え、我々大学の研究者は社会との分断を修復するために、さらなる努力をする所存ですが、その過程として国と地域を結ぶ役割を果たしたいと考えております。
阿武隈にはチエルノブイリ地域より高密度の暮らしがそこにあります。この暮らしを奪うことも、忘れ去ることもできません。川俣町では起きてしまったことは受け入れ、前向きに未来を考えようと努力しております。どうか、地域の声に耳を傾け、“地域の暮らしスケール”の再生計画が地域とともに推進できますよう、重ねてお願い申し上げます。
学会等における講演・主張の記録
大きな問題を眼前にして、我々は大学における研究者として“役に立ちたい”と思う。“役に立つ”とは関係性の中で役割を果たすということ。研究をやっていればいずれ社会の役に立つという主張は無責任と紙一重。“現在”が大切であり、問題の解決が共有すべき目的である。協働の中で科学の役割は一部に過ぎないが、それを謙虚に受け入れて、関係性を保ちながら持続的な活動を行うことが我々のできることだと思う。
日本地理学会で福島における成果を発表しました 2014年9月20,21日富山大学
日本学術会議公開シンポジウム 東日本大震災を教訓とした安全安心で持続可能な社会の形成に向けて」2014年9月7日学術会議講堂
農村計画学会2014年度春期大会シンポジウム「東日本大震災と農村計画学会─震災後3年の復興・生活再建の課題・成果・深化の展望─」 2014年4月12日東大弥生会館
日本地理学会福島大会「たたかう地理学」 (2013年9月29,30日)
IGU(国際地理学連合)京都地域会議「Current Situation and Future Perspective on Radioactive Contamination in Fukushima Evacuation Zone - A report from Yamakiya -」 2013年8月8日
日本地球惑星科学連合大会2013スペシャル・レクチャー「地球人間圏科学における問題の理解と解決-福島からの報告- “問題の共有”と“問題の解決の共有”」 2013年5月24日
日本地理学会春季学術大会:「空間線量率の空間分布から推定される放射性物質沈着時のプルームの動態」 2013年3月29日
ちかすいネット:「阿武隈の広域放射能汚染地域で考える社会と科学技術の関係」-“問題の共有”と“問題の解決の共有”- 2012年11月17日
SKIL講演会「阿武隈の広域放射能汚染地域で考える社会と科学技術の関係」 2012年10月19日
日本地理学会秋期学術大会:「阿武隈山地の広域放射能汚染地域における空間線量率の時空間変化」 2012年10月2日
「里山流域単位の除染を目指したGIS整備」 2012年9月8日
東京農業大学で開催された日本緑化工学会・日本景観整体学会・応用生態工学会3学会合同大会(ELR2012)の研究集会「原子力災害被災地の生態再生(Ⅰ)-里山ランドスケープの放射能と除染-」において講演し、様々な有益なコメントを頂くことができました。現在は非常事態であり、問題を解決するために新しい考え方が必要ですが、なるべく早く提案していきたいと思います。
G空間EXPOシンポジウム「地理学から提言する新しい国土」 「広域放射能汚染災害に対する地理学者の役割」 (2012年6月23日)
月刊地理9月号に原稿が掲載されました。原稿はこちらをご覧ください。
日本地球惑星科学連合大会「放射能環境汚染と地球科学」セッション「福島県、阿武隈山地における放射性物質の空間分布の特徴」 (2012年5月24日)
地理学では“分布”を明らかにし、それがランダムでなければ何らかのメカニズムがあると考えます。広域の空間線量率の分布から推定できることについて述べましたが、セシウムの移動について研究者間で十分なコンセンサスができていないことがわかりました。雨樋の下が高い、といったホットスポットの形成からセシウムが動いていることは確かなのですが、流域スケールでは空間線量率の分布は沈着時の特徴を残していると考えられます。ミクロにみると動いていても、マクロな視点では空間線量率の分布が大きく変わるほどには動いていない。フィールドにおける現象を理解するには、現象と時間・空間スケールの関係を理解することが重要です。あまり動いていないということを前提に、長期にわたる放射能とのつきあい方を考えることができないだろうか。
2012年3月28日 日本森林学会大会(宇都宮大学) 「川俣町山木屋地区における住民による森林・農地除染と再生計画に向けた放射能調査」(予稿集)
2012年3月28日 日本地理学会春期学術大会シンポジウム<震災と地理学>(首都大学東京) 「放射能汚染と地理学」 (予稿集)
詳細放射能汚染マップを作成する必要性について述べましたが、この一年間で試みた簡易測定法の説明が十分でなかったため、マップ作成のフィージビリティーの主張が弱かったかも知れません。雪融け以降の実践で示したいと思います。時間切れで説明できなかった最後の2枚、特に27枚目のシートについては、その意味について皆さんと議論したいと思います。28枚目はディスカッションの中で若干触れましたが、主張は不十分だったような気もします。引き続き、主張していきたいと思います。
2011年11月14日 千葉大学けやき会館 「放射能汚染地域の復興に向けた 地域と千葉大学の協働」
2011年11月5日 千葉市科学館主催市民講座(千葉大学) 「福島を忘れない-近代文明の中の暮らし-」
2011年10月25日 市川市教育会館 「福島を忘れない-近代文明の中の暮らし-」
2011年9月23日 日本地理学会秋期学術大会(大分大学) 「福島第一原発事故によって拡散した放射性物質に起因する空間線量率の分布の特性」 (予稿集)
報告書、記事等
日本地球惑星科学連合ニュースレターJGL 2013 No.3(8月)「地球人間圏科学における問題の理解と解決-福島からの報告-」
「広域放射能汚染に対する地理学者の役割」 月刊地理2012年9月号「地理学から提言する新しい国土」
東電福島第一原発事故後の一年と数ヶ月で考えたことを纏めることができました。あとは具体化に向けた提案が課題です。
農村計画学会における東日本大震災報告-農村計画学会大震災復興特別委員会-
福島の現状は知って頂くこと、忘れないことが何より大切だと思います。そのためできるだけ発信をして行かなければならないと思います。問題の大きさ、深刻さの前に、気後れ、恥ずかしさもありますが、機会を頂いて執筆をした結果を発信したいと思います。
除染、帰還について明記しましたが、補足しておきます。チーム千葉大では地域と協働することを重視しています。そのためには“目的の達成を共有”する必要があり、それが除染、帰還であるということ。帰還に至るマイルストーンは未定ですが、あらゆる可能性を検討し、目的の達成のためにやるべきことを積み重ねて行きたいと思います。また、飯舘村の高標高部からの除染に触れましたが、それは”地域の暮らしの復興を主体とする対策を検討すべき”という主張と解釈しています。
畜産の研究、第66巻、第1号「東日本大震災下の動物たちと人間の記録」において「東電福島第一原発事故による飯舘村および周辺地域の放射能汚染の現状」と題して寄稿しました。
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